どもども。
敢えて誤答から教訓を学び取るシリーズです~

今回は常用対数を用いて桁数を求める問題に関する誤答を見てみます~~
問題: (1)
は何桁の自然数か答えよ。必要ならば
≒0.3010,
≒0.4771
を利用してもよい。
(2)
は何桁の自然数か答えよ。必要ならば(1)で与えた近似値と
を参考にしてもよい。ただし, e は自然対数の底とする。誤答例です~~~


自然数 n が k 桁の自然数であることは,

が成り立つことと同値です。
このため,

の値さえ分かれば

に着目して k の値を求めることが出来ます。
常用対数を利用したこのような桁数の問題は頻出ですよね


などの近似値が問題で与えられ,それに基づいて

の値を出していくというのが
よくある流れです~
(1)ではその流れに忠実に従って20桁と答えを出すことが出来ましたし,桁数もそれで合っています。
(2)も同じようにその流れ通りに30100桁と求めています。ところが,これは不正解です。
正解は30102桁なんです。2桁分ずれてしまいました。同じ手法で解けるはずなのに何故(2)では
正しい答えが得られなかったのでしょうか。
それは

という数値が大きすぎたために,

の近似値を0.3010としたのでは精度が低すぎて
正しい桁数が得られなかったからなんです

実際には

のようになっていて,このことから,

となるので,30102桁が得られます。
今回のポイントは,
n が十分大きいと,それに合わせて常用対数の精度も上げていかないと正しい桁数が
得られないということです~~

問題文では「(1)で与えた近似値」を参考にしてもよいとありますが,あくまで参考にするだけで実際の計算には
使えません。どうにかこうにかして

の近似値を0.30102…くらいの精度まで格上げしなくては
いけません。つまり

を見出さなければなりません。
先に小数第5位の数字が2であることを見せてしまったので

を示す
という目標がすぐに定まりましたが,実際には小数第5位が2であることも分からない状態から始まっているので
本来はもっと難解です。そしてとても厄介なことに0.301029994…という数値から分かるように,
もう殆ど0.30103に近い数値なんです。そのため,0.30102994≦λ<0.30103 を満たす λ で
上から評価しないといけないため相当シビアです

(1)と(2)はぱっと見では同じような問題に見えると思いますが,実は(2)はとても難しく,多くの試行錯誤を
要求されることになりそうです。入試で出すならもっと十分な誘導がつくことでしょう~
誘導無しで出すならレポート問題とかには良いかもしれません。
ではどのように2の常用対数を追い詰めていけばよいのでしょうか。
粗い評価なら簡単に色々思いつきます。
例えば,

は比較的

に近いので,

は
およそ3だということになり,

の粗い近似値として0.3が得られます。
また,級数展開に基づいた近似なども有用な手段です。
このような操作をどんどん精度の高いものにしていきます~

さて,問題ではヒントとして

が与えられています。
e の常用対数のやや高い精度での評価式です。これを活用すると良いでしょう。
\times\left&space;(\log_e&space;2&space;\right&space;))
なので,メルカトル級数
なんかを用いて

の近似値を獲得するという作戦なんかが真っ先に浮かびます。
しかしながら,この級数は収束が遅いことが知られていて,もっと効率の良い作戦を模索してみたいです~
少し級数の工夫をしてみます~
1<x<1 において,
=x-\frac{x^2}{\,2\,}+\frac{x^3}{\,3\,}-\cdots)
=-x-\frac{x^2}{\,2\,}-\frac{x^3}{\,3\,}-\cdots)
が成り立つことを示すことが出来ます。この2式を引くと,
-\log_{\,e}&space;(1-x)=\log_{\,e}&space;\frac{1+x}{1-x}=2\left&space;(x+\frac{x^3}{\,3\,}+\frac{x^5}{\,5\,}\cdots&space;\right&space;))
が得られます。奇数乗しか出てこない上に,ずっと係数が正であるような項が続いてくれるので,
収束の速さが期待できそうです。では代入する x の値をいくらにしましょう。

となるように

とする案もあるでしょう。ですが,もっと効率を上げたいと思います。
このような級数(マクローリン級数)は x の値が0に近いほど近似の精度が良くなるのですが,

より
もっと小さい値を代入したいです。
ここで再び

が比較的

に近いことに着目してみましょう。
=\frac{10\log_{10}2-3}{\log_{10}e})
\left&space;(&space;\log_{\,e}\frac{1024}{\,1000\,}&space;\right&space;)&space;\right&space;\})
これを活用してみます。

となるのは

のときで,なかなか小さい値です。
^3+\frac{1}{\,5\,}\left&space;(&space;\frac{3}{\,253\,}&space;\right&space;)^5+\cdots&space;\right&space;\})
は十分収束が速く,はじめの

だけでも十分近似できています(誤差が約

)。
このため,
)
は精度の高い

の近似値になっています~

近似が出来ていることを保証するために正答例では
<5.264\times10^{-8})
が成り立っていることを検証しています。誤差がこれだけ小さいなら問題なく正しい答えが得られます~
ここまで述べたことを以下の正答例で丁寧にまとめていきます~




- 関連記事
-
スポンサーサイト
テーマ:算数・数学の学習
ジャンル:学校・教育