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2013年東京大学前期入試 理系数学 第3問 その2

2013.03.26 16:20|大学入試問題
どもども。

今回は前回の続きで今年の東大前期入試の理系数学第3問の続きです~~


問題はこちら~~FULL_2013_02_26_213320.gif
http://nyushi.yomiuri.co.jp/13/sokuho/tokyo/zenki/sugaku_ri/mon3.html

前回
http://mathnegi.blog.fc2.com/blog-entry-89.html



確率の問題でした~
しかし,今回は(2)からやっていきますが
この(2)は,もはや確率はほぼどうでもよくって,
基本的に無限級数の計算の問題です~

やや面倒くさい計算なので,あとで見直しをしている時に
「あ(1)の計算,ミスってた~
なんて気付いてしまったら大変です~

さて,(1)の答えとして出てきた確率 p(n) は n の偶奇によって
一般項が別々に与えられるタイプのものでした。

それを n=1 から順番に足し合わせていく無限級数
p(1)+p(2)+p(3)+p(4)+……+p(n)+……
を求めるのが今回の問題です~

偶数番目の項の和と,奇数番目の項の和とに分けて計算するのがウマそうですねー
その発想自体は良いのですが,いくつか注意しなければならない点が出てきます~car2_ambulance.gif

何も考えずに
p(1)+p(2)+p(3)+p(4)+……
={p(1)+p(3)+p(5)+……}+{p(2)+p(4)+p(6)+……}

が成り立つとして計算してしまうのは実は正しくないからです~
まぁ,結果としては,今回は上の式は正しいんですが,
実はそれは都合の良い条件が揃っているからであって
任意の数列 {a_n} の無限和について同様の結果は
無条件には成り立たないということを肝に銘じておかなければいけません~
詳しくはまた後ほど考えることにします~


さて,n項目までの部分和 S_n=p(1)+p(2)+p(3)+p(4)+……+p(n)
を考えます。偶数 n=2N の場合を考えると
S_{2N}=p(1)+p(2)+p(3)+p(4)+……+p(2N)
   ={p(1)+p(3)+p(5)+…+p(2N-1)}+{p(2)+p(4)+p(6)+…+p(2N)}
と書けます。

偶数項の部分和 T_N=Σ[k=1,N]p(2k) 
および奇数項の部分和 U_N=Σ[k=1,N]p(2k-1) 
を考えましょう~
今から lim [N→∞] T_N と lim [N→∞] U_N が共に収束することを確かめたいと思います~buta.gif

ちなみに,lim [N→∞] T_N=T, lim [N→∞] U_N=U (共に収束)とおくと,
lim [N→∞] S_{2N}=lim [N→∞] ( T_N+U_N )=lim [N→∞] T_N+lim [N→∞] U_N=T+U
を得ることができますよ~

T_N は具体的に計算すると T_N=Σ[k=1,N] k/(4^k) になるのですが,
このタイプの級数は T_N と (1/4)T_N の差を計算して上手く等比級数を
出現させるのがコツです~cat_4.gif


s1_20130326000441.jpg
  s2_20130326000441.jpg

最後の部分で, lim [N→∞] N/(4^N)=0 というのを使いました。
一般に, a>1 かつ kが自然数であるとき, lim [n→∞] n^k/(a^n)=0
が成り立ちます~dog_love.gif
今回の問題では k=1,2 のパターンが登場します。

これは,受験数学においては,周知の事実として無断で使っても割とOKなことが多いです。
丁寧に問題文中で「証明せずに用いて良い」と言って与えてくれることも多いです。
この結果が成り立つのは, n の多項式 n^k よりも n の指数関数 a^n のほうが
圧倒的に増加のスピードが早いから,というのが直感的なイメージですね~

一応,二項定理を用いた証明をざっくりと挙げておきます~

s4_20130326000442.jpg
s5_20130326000442.jpg


T_N の収束性が述べられたので,次は lim [N→∞] U_N の方ですね~
T_N よりは少々扱いにくいですが,やはり U_N と (1/4)U_N の差を考えると
上手くいきます~dolphin.gif

U_N の値を最後まで計算しても良いですが, T_N を含んだ式で表すことも可能です~

s6_20130326000442.jpg
s7_20130326000517.jpg
 

 の部分は以下のように T_{N-2} を使って表示することなどもできます~

s8_20130326000517.jpg

またこの式の第2項の部分の評価は,次のように済ませることもできます~

s9_20130326000517.jpg


また, U_N を具体的に計算した場合は次のようになります~eto_hitsuji.gif


s10_20130326000518.jpg
s11_20130326000518.jpg



U_N=Σ[k=1,N](k-1)(k-2)/(2・4^(n-1)) の (k-1)(k-2) を
はじめに展開してしまうというやり方もありますねーeto_mi.gif



s12_20130326000518.jpg
s13_20130326000543.jpg


なお, T_N と U_N は以下に示すように微分を利用して計算することも可能ですよ~insect_kuwa_m.gif


s31.jpg

s32.jpg
s33.jpg

2階の導関数の計算はちょっと面倒ですね~ 




さて,なんだかんだで lim [N→∞] S_{2N}=16/27 という結果が得られました。
S_{2N} が収束するというだけでは S_n の収束は結論付けられません。
次に我々は lim [N→∞] S_{2N+1} について考察をしなければいけません~

lim [n→∞] S_n が収束する必要十分条件は 
lim [N→∞] S_{2N} と lim [N→∞] S_{2N+1} が共に収束し,しかも値が等しいこと
ですよ~kaeru_en1.gif

S_{2N+1}=S_{2N}+p(2N+1) で,しかも S_{2N} は収束することが分かっているので
p(2N+1)の収束性を述べるだけで解決です~

s14.jpg



そんなわけで,とりあえず答えを求めることが出来ましたね

一度,部分和に直して考察しなければいけないことが面倒ですね。
極限というのは非常にデリケートなものなので,
何も考えずに安易に取り扱うのは危険なんです。

ここで,安易に取り扱ってしまった答案例を挙げてみますね~

s15.jpg
s16.jpg
s17.jpg

有限部分和の計算を飛ばして,最初から無限級数のままで計算しているので
最初の解法と比べると多少計算がしやすくなっていますね。
でも果たして,この答案で満点が取れるでしょうか。

まず答案の1行目です。
これは冒頭に述べたことと全く同じ事ですね。
p(1)+p(2)+p(3)+p(4)+……
={p(1)+p(3)+p(5)+……}+{p(2)+p(4)+p(6)+……}
は無条件には成り立ちません

また, T と U を求める計算の部分にも難があります。
はじめから Σ[N=1,∞]a_{2N-1} と Σ[N=1,∞]a_{2N} は収束しますよ~~
という前提の元で議論がされています。
本来であれば,まだこの2つの級数は収束するかどうか分かっていないので,
収束しますよ~~ってことを確かめるトコロから議論はスタートしなければいけないでしょう





ここから少々の間一般論になりますが,なにか数列 {a_n} が与えられたとき,
 Σ[n=1,∞]a_n と  Σ[N=1,∞](a_{2N-1}+a_{2N}) と 
Σ[N=1,∞]a_{2N-1}+Σ[N=1,∞]a_{2N} はどれも違う和を表しているので,
値も等しくありませんm_0006.gif


s18.jpg

もちろん,初項から第2N項までの部分和で考えるなら
上と同様の要領で分解したものはどれも同じ和を表しますが,
極限を取ってしまうと,たちまち話は変わってきてしまうのです。
これが極限の怖さですね

たとえば a_n=(-1)^(n+1) という数列の場合を考えましょう。
Σ[n=1,∞]a_n は収束せず振動,
Σ[N=1,∞](a_{2N-1}+a_{2N}) は0,
Σ[N=1,∞]a_{2N-1}+Σ[N=1,∞]a_{2N} は (+∞)+(-∞) となって収束しません。

s19.jpg


極限というものは,
大学数学レベルの知識がないと上手く扱えないこともあり,
高校数学の範囲ではかなりごまかされている部分があります。

nが限りなく大きくなった時に a_n が限りなく α に近づくことを
lim [n→∞] a_n=α と表す,と言われても,
自分は授業で習ったときは,なんだかすごくアバウトだなーーという印象を持ったものです~
「限りなく」っていうのが高校のうちは,ほぼ直感的なイメージでごまかされちゃうんですよね。

数列 {a_n} と {b_n} の極限について次のことが成り立ちますが,
高校数学のうちは厳密な証明はすることなく直感的に認めてしまいます。

s22.jpg


数列{a_n}に関して n→∞ のときの挙動は
「有限な値に収束する」「+∞に発散する」「-∞に発散する」「振動する」
に分類されますねm_0060.gif

数列{a_n}が単調増加数列であるときは,
少なくとも n→∞ のとき,「-∞に発散する」「振動する」という事は起きませんねー
「有限な値に収束する」「+∞に発散する」のどちらかになりますが,
もしも,任意の n に対してa_n≦M を満たすような定数 M が存在するならば 
lim [n→∞] a_n ≦M でなければいけないので,「+∞に発散する」という可能性も消えます。
したがって, lim [n→∞] a_n は収束します

これは,ちょっと難しい言葉を使って述べると,「上に有界な単調増加列は収束する」
ってやつなんですが,
ごまかしの上に成り立っている高校数学の範囲でこの事実を堂々と使って良いかというと
少し悩んでしまったりもします。

実数は数直線上にぎっしり詰まっている,ということは
高校数学では当たり前だという感じで直感的に認めてしまっていることですが
大学では,「でもそもそも実数ってなんだろね」といって実数の構成に立ち返ります。
実数の集合は,元々はただの集合です。
ただの集合には数直線上に詰まってるとかそんな性質は通常ありませんが
実数の集合の構成においては,その過程で
「数直線上に隙間なく並んでいる」という(意味の)性質を
公理として付け加えることをします。
いわゆる「実数の連続性」というものなのですが,それを認めるために採用する公理が
「有界単調列の収束性」またはこれと同値な命題です
高校ではこの実数の連続性が暗黙の了解で認められているんですね。

曖昧さを残したまま中途半端に実数の連続性絡みの話に
片足を突っ込んでるような感じがそこはかとなくするので
有界単調列の収束性を大学入試の中で使うことにはやや慎重になってしまうのです。



有界単調列の収束性を認めてみると,
手荒に極限を扱った先程の解答の修正が作れます~

T=Σ[N=1,∞]p(2N) と U=Σ[N=1,∞]p(2N-1)を
を求めるのに無限級数の形のままで計算を押し進めるには
まずはこの無限和が収束することを確かめなくてはいけません。

例えば全確率=1であることを利用してみましょうpakukapa.gif
p(n) は n 回のコイン投げでAが勝利してゲームが終了する確率でした。
「n 回のコイン投げでAが勝利してゲームが終了する」事象を P_n とおくと
P_1,P_2,P_3,…… は互いに排反です。
任意の n に対して p(n)>0 なので,部分和 S_n=Σ[k=1,n]p(k) や
T_n=Σ[k=1,n]p(2k) と U_n=Σ[k=1,n]p(2k-1) なんかは
単調増加しますね。
S_n≦1,T_n≦1,U_n≦1 ですので,
このことから S=Σ[n=1,∞]p(n)≦1,T≦1,U≦1 が分かりますonigiri_1.gif
Bが勝つ場合なんかも普通にあるので実際は「<1」ですね。


s34.jpg

s35.jpg


あるいは,具体的な計算で評価するとすると,
任意の自然数 n に対し, n<2^n,(n-1)(n-2)<2^n
が成り立つことを利用して T_N,U_N を等比級数で評価するなどの方法もあります~oni.gif


s23.jpg


s24.jpg

s25.jpg


s26.jpg



T と U の収束が分かると部分和の計算をスルーして計算ができます~ny_ozouni.gif


s27.jpg
s29.jpg
s30.jpg

終盤の部分は,Sの収束性を利用して
lim [n→∞] S_n= lim [N→∞] S_{2N}=T+U=16/27
とすることもできますね。 




長くなったので今回はここで終了です~rabi_happy.gif





   
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